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子どもの勉強を指導するのはなぜか?ある男の動機。

2020/08/22
【受験に関するコラム】
前回の記事では、受験生の親御さん向けに、お子さんに自ら個別指導を行うことをおすすめし、またそこには親側のリターンもあることを書きました。今回は、個別指導という決してラクではない行為を私に継続させている動機・モチベーションについて書きたいと思います。

前回記事のおさらい


親が子に個別指導を行う際のポイント

おさらいになりますが、個別指導のポイントとしては、以下の点を挙げました。

・別に自力に頼る必要はない。問題集の解答解説を読み込んで行えばよい。
予備校や塾でカバーされない部分が、両者バッティングせず、よい。模試の復習など。
・できる範囲で行えばいい。模試だけに限定など、できる範囲で無理なく

親側のリターン

また親側のメリットとしては、以下の点を挙げました。

・教材の内容が、政治、社会問題etc、親子で普段話さないような話題のキッカケになる
・親子で取り組むことから生じる共闘感当事者意識の共有

個別指導を継続するためのモチベーションをどこから得るか?


とはいえ、お子さんの個別指導は決してラクなことではありません。いや辛いです、ハッキリ言って。

私は受験英語は得意科目です。青学の二次試験レベルなら、過去問を解くと制限時間の1/2〜1/3の時間でほぼ満点を取ります(1〜2個は外しますが、これは自宅で緊張感なく適当にやっているせいもあるかもしれません)。

このようにもっとも得意な受験英語の場合でも、 ii に指導するのに実際の指導時間の6割くらい、準備時間にかかっていました。他の科目ならもっと必要です。それこそ指導時間の2倍とか…。

個別指導の際、絶対に i を批判したり責めたりしないよう、そこは本当に注意したなぁ…。「褒めて伸ばす」は、少なくとも勉強の個別指導の時間中は100%真理だと思ってます。

このように時間をかけて個別指導を行うのは、大変なモチベーションが必要です。私の場合ですと、会社員ですので月〜金は仕事もありますし…。。

なのでどうしても、予備校や塾にブチこんで、プロに全面的に任せきってしまいたい誘惑にかられます。学校や受験業界や「ドラゴン桜2」も、「子どもを信頼して任せることが大切」とか「素人の親が横からあれこれ口出しして、受験生を混乱させてはいけない」などと、親を誘惑してきます。

学校は、受験生に口出ししてもらいたくないんじゃなくて、自分達に口出ししてもらいたくないだけなんじゃないかとも思いますが…。

私は「アルジャーノンに花束を」の影響を強く受けています


では私がどこからモチベーションを得ていたかといいますと、いきなり話が飛んじゃいますが、私はアメリカのSF作家ダニエル・キイスのSF小説「アルジャーノンに花束を」の影響を強烈に受けているんですね。

ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」



2015年には山P (明治大学商学部卒!)主演でTBSのドラマになりましたので、原作は読んでないがドラマは見たというかたもいらっしゃるかと思います。


「アルジャーノンに花束を」あらすじ


少しあらすじを書きますね。若干ネタバレがありますので、ストーリーの重要な部分を知りたくない方は、一旦離脱して次の見出しまで飛んでください。

主人公の青年チャーリィには知的障害があります。日中はピザ屋で簡単な仕事を行っていますが、知能が低いためイジメを受けていることに全く気がつきません。夜は知的障害者のための教室で読み書きを習っており、若い女性教師アリスを慕っています。またチャーリィの家庭は、チャーリィの障害が原因で崩壊しています。

ある日チャーリィは教師アリスから、知能を向上させる画期的な脳外科手術が開発されたこと、臨床試験の実験台になってくれる被験者が探されている事を教えられます。

「ぼくは、かしこくなりたい…。」

チャーリィは勤勉で向上心が高く、賢くなろうと懸命に努力する青年ですので、喜んで手術を受け入れます。

手術後チャーリィの知能は急速に上昇していきます。上昇に上昇を続けて、ピーク時には大天才のレベルにまで達します。チャーリィは自分が受けた外科手術の研究チームに入り、この手術の研究に取り組みます。

大天才チャーリィが徹底的な研究の果てに得た、疑いの余地の全くない結論は、以下のものでした。

・知能上昇は、ピークに達したあと下降に転じる
・最終的に、手術前のレベルのはるか下まで下降する
・下降は、上昇以上に急激である
・解決方法は一切ない。これは理論的に完全に証明可能である

ちなみにドラマでは、山Pは大天才としての能力を難病の少女の治療・救済に使いますね。結末もバッドエンドではありません。

「アルジャーノンに花束を」の中の、ある言葉



さてチャーリィは、知能がまだ正常なうちに、知能低下後の生活の準備を色々行うのですが、その中には自分が将来収容されるであろう重度知的障害者の養護施設見学が含まれます。

この施設の入所者は40〜50台の中年男性ばっかりなんですが、精神年齢は1〜2歳なんですね。チャーリィが見学に行くと、40〜50台の中年男性が施設の従事者(こちらもやっぱり中年男性)の膝の上であやしてもらっていたり、中年男性が中年男性を抱っこしてあやしてやっていたりする、一見すると異様な光景が、あちらこちらで展開されています。

チャーリィは施設の責任者に面会して話を聞きます。そしてその責任者の人が、金を寄付してくれる人間はいくらでもいるが、時間や手間を分け与える人間は少ない、あんな大の男を抱っこしてやって哺乳瓶でミルクを飲ませてやれる人間がいったい何人いる?と行った感じの事を言うんですね。

私はこの言葉にがーんときまして。所長の意気に感ず、というか…。安心して受験勉強に打ち込める経済状態を維持するのはあたり前のことに過ぎず、子どもにとって必要なことであれば自分の時間を割いて捧げる必要があると…。

※子のニーズによります。塾や予備校でこそ伸びる子、深い自習を自分でできる子も大勢います。

この本を読んだのは i が中学2年性のときでしたが、以来所長の言葉が忘れられず。それ以来、かける時間こそ上下の波がありますが、時間と手間暇を捧げて、何らかの個別指導をずっと続けています。

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東野圭吾「あるジーサンに線香を」


なお、東野圭吾がパロディ?オマージュ?として書いた短編小説に「あるジーサンに線香を」という作品がありまして。寂しい一人暮らしの爺さんが特効薬で青年に若返り、女性と恋して、やがて薬の副作用で老人に戻りボケる、と言う話なのですが、これはこれで本家に劣らない傑作でして、私は大好きです。

東野圭吾の「怪笑小説」と言う短編集で読めますね。

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東野圭吾「動物家族」のことも言わせて。


私は東野圭吾の「〇笑小説」シリーズが大好きなのですが、中でもこの「怪笑小説」には「あるジーサンに線香を」以外にも「動物家族」という傑作が収録されており、オススメです。「動物家族」は子どもの気持ちを思いやれる親になるために絶対に読んでおきたい作品で、これまた、私の子どもへの関わり方に重要な影響を与えています。


今日はこのへんで。